激・桃隆の徒然なる日記&雑記

日常の話やら趣味の創作の話やらを徒然なるままに語っていきます。

 

月下の慕情 

ツクール2000のデータが……パソを起動させるたびに壊れる……。
8.1さんでの制作は……無理だ……。
ビスタさんをカムバックさせるしか……。

それはともかく、久々に小説を一筆しました。
これまた久々のFSネタです。
あー……ただ……R-15でもR-18でもないんですが、
ちょっと性的なアレの描写があるので、苦手な方はご注意を。
それでもよろしければ、続きよりどぞー。


拍手どうも有難うございました!


 辺りに広がる草原。爽やかに吹くそよ風が俺の頬を撫でる。それが例えば恋人と語らっているときであれば、何と自然も粋な計らいをしてくれるものだと思うが、生憎その感情は、目の前にいる魔物の存在によってかき消された。
「へっへーん、この程度、僕達の手にかかればイチコロさ!」
 調子に乗っているこの少年は、一応俺の息子で、カルンという。この子も十四歳という歳になった。俺がこの頃といえば、既に後の妻となる女性を口説いていたというのに、カルンは故郷にいた女の子に対して「田舎臭い女性はちょっとねー」というデリカシーのない台詞を吐くというのだから。
「カルン殿、甘く見てはなりません。わたしも騎士、相手の度量は弁えているつもりです」
 カルンを諌めるこの女性は、王国騎士であるレアーネ殿だ。俺はいつも、名前の語尾に「殿」とつけて呼んでいる。せっかくの仲間だというのに他人行儀な気もするが、これ以外に適当な呼び方がなかったもので。どうでもいい事かもしれないが、レアーネ殿は、俺の亡くなった妻に瓜二つだったりする。だからなのか、どうにも複雑な感情が胸の中を渦巻いている。しかし、『それ』がもし『愛情』だとしたら、俺はどうやって天国の妻に詫びればいいのだろう、という良心の呵責が湧き出てくる。
 もう、『それ』が確信に変わりつつある今、もどかしい想いが坩堝となって俺に襲いかかってくるんだ――。
「…………」
「お父さん、何をボーっとしているのさ! 目の前に魔物がいるのに!」
 一人息子に声をかけられ、俺は我に返った。
「あ、ああ、すまない。とっとと片づけてしまおう」
 俺はカルンとレアーネ殿に目配せし、剣を構えた。応戦の準備はできた、あとは軽く捻り潰すのみ。
 しかし、どうにもレアーネ殿の様子がおかしいような気がする。鬼気迫ってはいるのだが、それは魔物への殺気というより、自らに襲いくる苦悶を耐えているかのような。
 もしや、先日の森での一件を思い出しているのだろうか?
 それだけレアーネ殿にとっては――いや、どの女性も、同じことをされたら、死ぬよりも苦しい感情を抱えて一生を過ごさねばならないほどのものであろう。同じ男として、アイツは許しがたい。万死に値する。そうでなくとも、あの男――アルヴェスタは、俺とカルンの故郷の村を焼き払った張本人なのだから。
 しかし、後に気付く。アルヴェスタと関わっているようなそうでないような、そんな事実を。ある意味、ホッとするような、レアーネ殿の事情を。
 女性というのは、凄い。俺はつくづくそう感じるよ。


 こんな調子で魔物を蹴散らしながら、俺達の旅は続く。王都までの、復讐の旅が。
 一刻も早く辿り着きたいところではあったが、俺一人ならともかく、旅の連れに子供と女性がいる、少しは気を遣わなければいけない。今日も日が落ちてきた。そこかしこに樹が点在する程度の平原のど真ん中にいるのだが、なりふりは構っていられず、ここで一晩を明かすことにした。
「ねぇお父さん、干し肉とパンだけじゃおなかが持たないよー」
「我慢しなさい。それは俺とレアーネ殿だって一緒なんだぞ」
 息子も食べ盛りだ、無理もない文句だと思うが、厳しい旅の中わがままばかり聞いていられるような状況ではない。俺は敢えて厳しく諭した。
「確かに……何かもっと体力のつくものを食べたいものです」
 そう言うレアーネ殿は、どこか無理をしているように見えた。
「レアーネ殿、俺の分をあげるよ。何、一回食事を抜いた程度で衰えるような体力はしていないさ」
「あ、いえ、申し訳ありません……。ジェスト殿こそ、無茶はやめてください」
「きっとレアーネさんも疲れたんだよ、早く休んだら? 僕も疲れたから今日はもう寝るー」
「カルン!」
 早々に休む宣言をした馬鹿息子かと思ったら、俺の傍に近寄ってきて。
(お父さん、多分『アレ』だよ。ほらほら、『アレ』!)
 などと耳打ちをしてきた。
(……?)
(お父さんも結婚していたんだったら気付きなよー!)
(!)
 カルンのこの言葉を聞き、俺はようやく事態を飲み込めた。デリカシーがないのは俺の方だったかもしれない。
(レアーネさんを大事にしてやってねー、おやすみー)
 長い耳打ちが終わったら、息子は即座に寝てしまった。
「…………」
「…………」
 俺とレアーネ殿、共に言葉を発することなく、しばしの間、辺りを静寂が包んだ。
 月が眩しい。今宵は満月。丸い光の球は、泰然と俺達を見下ろしているように思えた。
「……な、なぁ、レアーネ殿。無理でなかったら、ちょっとだけ向こうに行かないかい?」
「ええ、大丈夫ですけど……」
 既に熟睡しているとは思うが、万一カルンが聞き耳立てているようなら、俺としても色々恥ずかしい。レアーネ殿を誘って、床に就くまで二人きりで月夜を過ごそうと思った。


「レアーネ殿。俺達が男だからといって、別に隠す必要はないのに」
「隠す、とは?」
「君が今、女性の月の物の真っ最中、ということだよ」
「!」
 レアーネ殿の頬が赤く染まったのを、月の光で確認することができた。
「すまない、気を遣えず。レアーネ殿が魔物と戦っているときに見せた表情……あれは下腹部の痛みによるものだったのだろう?」
「……ジェスト殿やカルン殿に余計な迷惑をかけてはならないと思い、黙っていたのですが……その通りです」
 レアーネ殿は月を見上げた。
「女性って本当、面倒臭いですね。毎月こんな苦しみを味わわなければならないこととか、すぐに感情で動いてしまうところとか……」
「月の物はともかく、感情に関しては、別に全部の女性がそうだとは俺は思わないよ」
「亡くなった奥方がそういった方ではなかったからですか?」
「それもあるが……俺は女性蔑視は嫌いだからさ」
 あの男と比較しているようで、少しばつが悪くなった。しかし、俺は言葉を続けてしまう。
「あと、俺は、ホッとしたんだよ。君に月の物が来てくれて」
「…………」
「単刀直入に言うと、妊娠していなかったということだからさ」
 レアーネ殿の顔が暗くなった。あぁ、思い出させてしまった、と自責の念に駆られる。もっと適当な言葉はなかったものか、と。
 脆く儚いレアーネ殿の心を慰めたい。そのためにはどうしたらいいだろう。肩を引き寄せるか、そっと抱くか、彼女の額に唇でも当てるか――。
「!」
 何というよこしまな気持ちを彼女に抱いてしまっているのだろう。しかし、この想いは偽りのものではない。俺の『男』としての衝動を強固な理性で抑えとどめているが、それが崩れたら……下手すればアルヴェスタと同じく……。
「フフッ……自分が、怖いな」
「ジェスト殿?」
 レアーネ殿の声で、俺は我に返った。
「いや、何でもないよ」
 笑って取り繕ったが、一瞬湧き起こった感情が複雑に思えた。
「ほら、月が綺麗だ。こんな月を見るのは久々だな」
「わたしもです」
「しばらくここにいよう。何か居心地いいからさ」
「ええ!」
 月を見て、俺達二人は微笑み合った。


 月下にて交錯した想い。忘れようがないレアーネ殿への感情。
 それはきっと、幸福な未来の暗示なのかもしれないと思った。
 お互い、一度はかけがえのないものを失ったが、二人で手を繋いで歩いていくことで、きっとまたかけがえのないものを生み出していける。
 そうとすら思った。
 フラウ、君は許してくれるだろうか。
 君も俺を愛してくれているし、俺も君への想いを忘れたわけではないのだけど。
 ただ、ただ――。


 朝日が眩しくなった頃、俺とレアーネ殿は起床した。あれから一時間ぐらい月を眺めながら談笑して、お互い眠くなったところで床に就いたのだが、想像していたよりは寝坊をせずに済んだ。
「おはよう! 僕なんてとっくの昔に起きていて、剣術の練習をしていたのになぁ」
「お前はやたらと早くに寝たからだろう? まぁ健康的といえば健康的だけどね」
 カルンと軽く言葉を交わした後、レアーネ殿の方を見た。昨日よりは顔色がいい。多分、月の物のピークを過ぎたのだろう。
「おはようございます、ジェスト殿、カルン殿」
「おはよう……はいいけど、僕にまで『殿』つけはやめてほしいなぁ。そんな呼び方をされるほど人生経験重ねているわけじゃないのにさ」
「あ、その辺はわたしの口癖ということでご勘弁ください」
 そんなカルンとレアーネ殿の会話を聞いて、俺は思わず笑みが零れた。
「それよりそれより、お父さんとレアーネさん、どこまで行ったの?」
「一体どういう意味なんだ……?」
「そーいう意味!」
「こんな知識どこで覚えた! やれやれ、やはり俺の子ということなんだな……」
「クスクス!」
 今度はレアーネ殿が笑った。
「それはそうと、早速出発しようか。カルンはともかく、レアーネ殿は大丈夫かい?」
「はい、お気になさらず」
 不意にどこからかの目線が気になった。カルンの方を向くと、やたらとニタニタした張り付いた笑みを浮かべていた。
「カールーンー!」
「えーえー? お父さんもムキになっちゃってー!」
「も、もう、やめましょう、こんな朝から……ウフフ!」
 今日もいつも通り、旅は続く。


 レアーネ殿……俺の気持ちは本物だ。
 だから、だから、いずれ――俺の想いを吐露しようと思う。
 こんな俺を受け止めてくれるだろうか。俺を愛してくれるのだろうか。
 月下の慕情は、永遠に尽きることはない。確かな想いは、心にあるのだから。
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category: 小説

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