激・桃隆の徒然なる日記&雑記

日常の話やら趣味の創作の話やらを徒然なるままに語っていきます。

 

幸福と辛苦のアンビバレント<5> 

善は急げ、という訳で約3ヶ月ぶりのコレです。
当初の予定より大分駆け足展開になってしまった……。
何せ、小説自体その期間全く書いていなかったものでorz
最初から読み直してみると、若干前後の齟齬があったりするのが、もう、もう……。
小説書くのって難しい! 文章で全てを表現するって難しい!

お気づきの方がいらっしゃれば嬉しいんですけど、
この作品では、とある一点の要素を注視して物語を展開させています。
今回分もその辺の描写は十分にありますね。
私如きが大それたことは言えるはずもないですが、
それでも言わせて頂くと、人間というか生き物の根源的要素です。

何というか、「これが私の『面白い』だよ!」ということを熱烈にアピールしたくて
小説を書いている訳ではなく、一定のテーマを持たせて心に訴えるものを書きたい、
といった感覚で書いているので、もしかして面白みが薄いんじゃないかなぁ、
娯楽小説なはずなのにこれは如何なものかなぁ、とモヤモヤしています><
そもそも実力が全然中途半端な訳ですが\(^o^)/


「ふわぁぁぁ……またこんな時間か……」
 この村に来訪してから、三日が経過した。三日目の朝もルードは大寝坊をし、振り子時計の針が示していた数字を見て、あからさまに顔をしかめた。そして、長い髪を整えて、とぼとぼと食堂に向かうのだった。
 昨日は結局、夕飯までジルの家で御馳走になり、その足で宿屋へと戻っていった。一人でブラブラとするはずだった一時の休暇は、ステラとジルと共に過ごしている時間が大半となっている。険しかった顔は、そことなく柔和になっていた。
 ルードは、そんな自分に違和感を持ち始めた。何故、俺が――残忍無比な剣士であるはずの俺が、こんなにも穏やかになっていっている?……と。
 全ては、森であの女を助けてから――。
 ルードの中で、感情が錯綜した。昨日の朝、食事を共にしたマリウの言っていたように、「疲れた」のかと。そう、今までの人生に。
 気付けば、剣を持っていた。気付けば、人を殺していた。強くなるためだったら何でもし、強さを誇示するために非情な手段を取ってきた。そんな彼を保護した、父のような存在だった師をも利用し、裏切ったという過去を持つ男。それが本来のルードのはずだった。
 そんな男が、穏やかな心を得つつある。
「馬鹿なッ!」
 ルードは考えに考えを詰め、廊下の壁を殴った。しかし、それは彼の拳を痛めた以外には何ももたらさなかった。
「どうかなりそうだ……このままだと……。一週間の滞在の予定を早めて、いっそ今日にでもここを出ていこうか……」
 そんなことをぼやくルードの足は、自然と食堂に辿り着いていた。機嫌の悪そうなルードの顔を見て、給仕は一瞬怪訝な表情を浮かべたが、すぐに平常になってルードに朝食を手渡した。
 ルードは席に着き、食べ物を口の中に入れた。
「…………」
 黙々と食べている。そんな彼の頭の中は、ステラとジルが作った料理のことで満たされていた。
(フン、たかが人の作った料理に未練を抱くなど……)
 ルードの目が、慕情を湛えていた。
「…………」
 早々に朝食を食べ終わり、食器をカウンターに返した。そして、宿屋の受付に一言かけ、外へ出ていった。しかし、彼がチェックアウトをした様子はなかったのだった。


 この日の朝も、風は涼しく、太陽が眩しかった。子供達がはしゃいでいる声が聞こえ、鳥のさえずりが耳を射止め、踏みつける大地は緑で溢れていた。
 ルードは、ジルの家へと向かった。起きたてのときにぼんやり考えていた、自分に芽生えつつある穏やかな心、というものにケリを付ける――という様子には見えなかった。それは、彼の優しい瞳が物語っている。
 ただ、ステラとジルの顔を見なければ、一日が始まらないような気がしているのだ。まだ出会ってから三日しか経っていないというのに、この心境の変化は未だかつて彼自身経験したことがなかったものであった。
「俺は……宿をチェックアウトして、村を出ていくはずじゃなかったのか……?」
 歩きながら、独りごちた。
「未練……か……」
 ルードはモヤモヤとした気持ちを抱きながら、ジルの家の前に着いた。溜息を一つ吐いて、ドアをノックする。しかし、反応はない。
「……?」
 何度ノックしても、反応はなかった。何かあったのかと思い、ドアノブに手をかけたが、開かない。どうやら鍵が閉められているようだ。
「もしや、まだ寝ているのか……?」
 ルードはこれ以上の疑問を抱かず、仕方なしとばかりに踵を返した。
 その時。
「おーい、ルード君!」
「!」
 後方から声がした。ジルの声だった。
「出かけて……いた?」
 振り返って呆けているうちに、ジルがルードの傍に駆け寄ってきた。
「せっかく来てくれたのにすまないねぇ、ちょっと近所の家に寄っていてさ」
「あの女は?」
「ステラちゃんのことだね? ステラちゃんならこっちさ」
 ジルはルードの腕を引っ張って、どこかに連れていこうとした。ルードは抵抗することなく従い、なすがままについていった。


 腕を引っ張られていって着いた先は、ジルの家の近所にある家だった。着くや否や、ジルは無遠慮にドアを開け放った。
「はいはいよしよし……ウフフ!」
「……!?」
 そこには、赤ん坊をあやすステラの姿があった。
「ステラちゃん!」
「ジルおばさん、どこに行っていたんですか……って、えっ!?」
 ステラはルードの姿を見て、きょとんとした。ルードもまた、目を見開いている様子である。
「あ、こんにちは、私がこの赤ちゃんの母親の、リーシアという者です」
「あ、ああ……」
 リーシアと名乗った女性は、ステラから我が子である赤ん坊を受け取った。
「悪いねぇ、リーシア! ステラちゃんのわがままに付き合わせちゃって!」
「ありがとうございました!」
「いえいえ、この子もこんなに可愛い女の子に抱かれて、嬉しかったと思いますよ、フフッ!」
 女三人の談笑している姿を、ルードは蚊帳の外とばかりにポカーンと見ていた。
「ところで、このお兄さんは誰なんですか?」
「あぁ、ステラちゃんの想い人さ!」
「!」
 ステラは顔を真っ赤にした。刹那、
「断じて違う!!」
 と、ルードがムキになって怒鳴って断固否定した。
「ルード君! いくらなんでも完全否定はないでしょ!」
「実際に違うんだから仕方ないだろう!?」
 そんなジルとルードのやり取りを見て、ステラは肩をすくめた。
「ステラちゃん、落ち込まないで、ね?」
「うぅ……」
 こんなけたたましい中、赤子は豪胆にもスヤスヤと眠り始めた。
「一体何かと思えば……俺は帰る!」
 一通り事の流れを見聞きしたルードは、こんな面倒事は勘弁だとばかりにその場を去ろうとしたが、ジルがルードの長い髪を掴んだ。どこかデジャヴである。
「ちょっとルード君! ステラちゃんを少しは労わってやりな!」
「あのな……」
 ルードが首を向けた先には、落ち込んでいるステラの姿が見えた。
「……クッ!」
 ルードはしかめっ面をし、ステラの元へ足を運び、手を掴んだ。
「!」
「ほら、行くぞ……」
「ルードさん!」
「これ以上面倒なことになるのは避けたいだけだ……ハァ」
 ステラは立ち上がった。その顔は明るい。
「また遊びに来てね!」
「はい!」
「じゃあね、また来るよ!」
 リーシアは、去りゆく三人に笑顔で手を振ったのだった。


「で」
「ルードさん?」
「どうしてお前と俺の二人きりという状況下になったんだ……」
「だって、ジルおばさん、今食事作っていますし?」
「手伝わなくていいのか?」
「何か、今回はいいって言われたんです」
 二人は、ジルの家の庭の草むらに腰かけていた。元々ルードが一人でくつろいでいたところを、ステラがやってきて、自然と二人になった、という感じである。
「…………」
「…………」
 しばらく静寂が辺りを包んだが、
「……リーシアさんの赤ちゃん、可愛かったなぁ」
 と、ステラの一言がそれを破った。
「フン」
 ルードは素っ気ない反応を返した。しかし、
「私も、いずれは赤ちゃんを産むのかなぁ……」
 というステラの一言で、ルードは一瞬心が騒いだ。
「産みたければ、相手の男を探して結婚でもするんだな……」
「ルードさん、ちょっと声が変ですよ?」
「何を? 俺は風邪など引いている訳じゃないが」
「う……す……少しは察してくれたっていいじゃないですか……」
 ステラは顔を再び真っ赤にした。
「……チッ。断っておくが、出会ってからたかだか三日しか経っていない女に、そんな感情を抱く道理はない」
「ルードさん……」
 ルードはこう粋がってはみたものの、ステラへ対する感情はこれまで持ったことがなく、説明がつかない、というのが真実である。彼とて男、そして大人、女性といわゆるそういう関係を持ったことがないわけではない。しかし、これまで寝てきた女性との間には、ステラに対するような感情を抱いたことはなかった。
(そんな感情……? 俺はその感情を……コイツに……?)
 ふと、ステラの顔を見つめた。ステラもまたルードを見つめ、二人は目が合った。
 お互い、鼓動が高鳴っていった。
「…………」
「…………」
 しばし見つめ合い、そして――。
「!」
 ルードは、ステラを抱きしめた。
「ルード……さん……」
「! お、俺は……」
 無意識下に自分が行ったこと、それはまさに恋心ゆえの衝動だった。我に返り、ルードはすぐさまステラを放した。
「す、すまん、その……」
「ルード、さん……」
 ステラだけでなく大人のルードすら、純情そうな素振りで、照れた様子だった。
「ねぇ、ルードさん……私……ルードさんの……」
 しかし。
「……できない」
「え?」
「俺の心が、お前に惹かれているとしても……俺は……お前と……一緒にはなれない……」
「!」
「俺は……修羅なんだ。《漆黒の修羅》と恐れられている、残忍な人斬りなんだ……。そんな俺が、お前と一緒になって、幸せを得ようなど……そんな、虫のいい話など、ある訳がない……」
「……ルードさんは、悪い人じゃありません」
「! 戯言を……」
「だって、本当に悪い人だったら、食べ物をあんなに美味しそうに食べるはず、ないもの!」
「……!」
「食べ物を粗末にしない人に、悪い人なんていないんです……! ルードさんは、旦那様みたいな人なんかじゃ、ないんです……!」
「な、何を……」
「ルードさんには、これからも、美味しいものを食べて、幸せな気分になってほしいんです! 私、料理、頑張って覚えますから……!」
 今度は、ステラからルードへ抱きついた。ステラはルードの鼓動を感じた。それは自然のなりゆくままの、ゆったりとしたものだった。先程までのルードの動揺は、そこからは感じ取れなかった。
「何、だ。僅か三日だというのに……俺とお前が出会ってから……。今、とても、心がスッキリしている」
「ルードさん?」
「お前の心に一番突っかかっているのは、『旦那様』とやらだろう?」
「……はい」
「まずは、そいつを片付ける」
「!?」
 ルードの意外な言葉に、ステラは驚愕した。
「エドゥアルド・レ・フィルアーチェなら、俺もよく知っている男だ。もう何年も前の話だが、あいつに用心棒として雇われたことがあってな。奴隷を何人も抱えるありきたりな腐った富豪だとは思っていたが、ハハッ、あの中にお前がいたとはな……当時は全く気にも留めていなかった」
「え、ルードさんが……前々から私の顔、知っていたんですか……!?」
「それはさすがになかったな。まぁそれはともかく、あの男が今でもお前を血眼になって探しているかと思うと、気が休まらないだろう? 俺が何とかしてやる」
「え、え、え……?」
「明日にでも村を発つ。だから、しばらく待っていてほしい」
「は、はい……」
 いい雰囲気になったところで、ジルの家の窓から温かい料理の香りがしてきた。
「おっと、いい匂いがしてきたな。もう飯時か」
「そういえばそうですね!」
「タダ飯を食わせてもらってばかりだな。何かばつが悪いが……まぁ、ジルが作る料理は美味いしな」
「!」
 ルードは、ジルの名前を自然に声に発していた。それだけ心を許したということなのだろう。
 今日も、ジルが作った美味しい手料理をごちそうになった。ルードもステラも、食べている間、幸せそうな表情を浮かべていた。こんな当たり前の幸せを、二人は少し前まで知らなかったのだ。それは、これからも続いていくはずである。
 しかし、ルードの出立を待たぬまま、この村に惨劇が襲い来るのであった――。
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category: 小説

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