激・桃隆の徒然なる日記&雑記

日常の話やら趣味の創作の話やらを徒然なるままに語っていきます。

 

はつこい 

すんごーーーく久々に小説執筆しました。
バトンのアレ除くと、実に7~8ヶ月ぶり? おいおい……。
カトレアのちょこっとした小話です。ヤマもオチも意味もないですが。
大した代物ではありませんが、興味ございます方は続きよりどうぞ。
ルード小説の続きは気が向いたらいずれ……。

なお、タイトルは先日ご結婚された某F山氏とは一切関係ありません。
……関係ありません……!ヽ(`Д´)ノ
いいんだ、将来イケメンパパンになって萌えを提供して頂ければ!(謝罪)


 退廃都市《ガベッジガーデン》の夜を照らすネオンライトは、男女の劣情をも象徴している、怠惰な輝きである。今宵も、数多の風俗嬢が欲望みなぎる下卑た男相手に〝商売〟をする。そうして生まれる新しい命は、堕胎という形で淘汰されていくのだ。
 一流の《始末屋》フェイシズ・ヘイルムハートによって拾われ、名付けられた少女・カトレアもまた、元はそういった〝命〟の一つであった。名すら与えられず、捨てられた少女。盗みをし、残飯を食べ漁り、また、体を売った経験まである。大体頭に浮かぶであろう汚い行為は、大方やり尽くしていた少女だった。
 そんな少女は、今はといえば『幸福』という言葉以外では形容しようのない、満ち足りた日々を送っている。フェイシズに拾われて数ヶ月後、正式に養子縁組をし、事実上の親子となった。料理の才能を開花させ、父であるフェイシズに美味しい食事を振る舞い、談笑する、という人並に与えられた毎日を謳歌していた。
 しかし、カトレアは現在、ちょっとした悩みを抱えていた。しかも、フェイシズにすら相談できないような――というか、フェイシズに知られたら、激怒されるであろう悩みを。
「ハァ~……」
 カトレアは、携帯電話に写っている画像を見て、溜息をついていた。その画像の正体とは、フェイシズが最も警戒している、性格が軽く異性交遊関係もルーズな、リッシュ・ステュアートの顔写真なのだ。
「何かなー、分からないなー……。どうしてリッシュの顔を見ると、変な感情になるんだろう……」
 カトレアは、それを『恋』だとは全く自覚していなかった。そういう恋愛感情を踏まえた上での人付き合いはこれまで皆無だったというのもあるが、何より、いわゆる『思春期』という時期を迎えている、複雑なお年頃だからだ。
「フェイには相談できないよね……。フェイにこのことを知られたら、絶対にリッシュとの友達付き合いをやめさせられちゃう……。何か、そんな予感がするもの」
 ひたすらボタンをタッチして、リッシュないしリッシュとペアで撮った写真を眺めている。父に相談できないこと、とは思いながらも、その顔は笑みを湛えていた。乱暴な言葉で言うと『ニヤついている』という類のものである。
「ただいま」
「!」
 父フェイシズが仕事から帰ってくるや否や、慌てて携帯電話を隠した。
「お、おかえり、フェイ! 食事ならできているわ! 今日はオムライス!」
「いつもありがとう、カトレア。お前の食事はいつも美味しいよ」
「うん、うん! 頑張っているから、うん……!」
 カトレアが、先程とは違う、いわゆる『作り笑い』を浮かべていることに、フェイシズはすぐさま気付いた。
「どうした? 何かあったのか?」
「え、何でそんなこと言うの? 何もないってば! 本当!」
「怪しいな……」
 怪訝な表情を浮かべるフェイシズだったが、まずはお腹が減ったということで、
「まぁ、それより何より、いただきます」
 と言って、カトレアが作ったオムライスを食べ始めた。
「おぉ、また一段と美味しくなったな。いつもありがとう、カトレア」
「どういたしまして!」
 カトレアもまた、自分の作った料理に舌鼓を打っていた。
「……何か悩みがあったら、俺にいつでも相談するんだぞ。大事な娘だ、親身にならなくてどうする」
「うん、ありがとう。で、でもね、本当に何にもないから!」
「そうか。そうならいいんだけどな……」
 親身になってくれようとするフェイシズに、何やら申し訳ない気持ちになったカトレアだが、リッシュの関係だけはどうしても相談できないのだった。何せ、フェイシズは日がな「リッシュに何かされたらアイツを全力で殴る」と公言しているのだから。
(ハァ……アイリスに相談かなぁ、このことは)
 カトレアは、スプーンで力なく皿を鳴らした。


 翌日も、フェイシズは仕事だった。最近のフェイシズは、一人で仕事をすることが多い。一人で何とかなるほど、大して脅威となる組織がないという証拠である。
 カトレアは、前以てアイリスに会うためのアポを取ってあった。アイリスとも親しい付き合いゆえか、アイリス側からいつも都合を付けてもらえる。カトレアはいささか申し訳ないと思っているが、せっかくの厚意を無下にするのも忍びないであろう。二人は、フェイシズの自宅からそう距離がない喫茶店前で合流した。
「よっ、カトレア!」
「アイリス、ごめんね……。アイリスも仕事のはずだったのに」
「いいさ。今回の仕事はあのチャラ男だけで余裕だろうし」
「アイリスとリッシュも、最近仕事に余裕があるんだね」
「アハハ、そうだね、うんうん」
 アイリスは相変わらずの豪快な姉御肌だった。そんな彼女に、リッシュへの感情が云々という相談が通じるかは謎だが、少女カトレアは、アイリスに同じ女性としての信頼も寄せているようである。
「さ、店に入ろうかい。お茶代はアタシの奢りでいいよ」
「えっ……で、でも、いつも悪いわ」
「まぁまぁ、遠慮しなくていいよ。アンタはアンタなりにいつも頑張っているんだしね」
「う、うん……」
 二人は、退廃都市という環境に似つかわしくない小奇麗な喫茶店へと入店した。


「ハァァッ!?」
 カトレアは、自身の複雑な想いを伝えたら、アイリスの開口一番、この叫びを返された。
「ちょ、ちょ、え……?」
「あああ、やっぱりだよね、リッシュは友達だものね……」
「うーん、よりによって、ねぇ」
 アイリスは、ホットレモンティーを口につけた。
「アイツの女性関係は派手だって、カトレアも知っているだろうに」
「ね、ねぇ、私、分かんないんだけど、友達と感じることに違和感があるって、変……?」
 カトレアはアップルパイを少し口に含ませ、若干うつむいた。
「む、難しい質問だねぇ」
「アイリスは、リッシュのこと、どう思っているの?」
「どうも何も……ただのビジネス上の付き合いなだけさ。それ以上でもそれ以下でもない」
「ふーん……ハァ」
 カトレアの溜息を最後に、しばし沈黙が流れた。
「…………。あのさ」
「?」
「初恋は実らせない方が、これからの人生生きやすいよ」
「はつ……こい!?」
 さすがのカトレアも、『恋』という単語だけなら知っていた。しかし、いざ口にされると、やや狼狽してしまうようだった。
「アタシもね、恋という経験が全くなかったわけではないよ。ただ、初恋は実らなかったさ……うん、まぁ」
「へぇ……」
「うんうん、甘酸っぱいねぇ~。何か懐かしいよ、この感覚」
 アイリスはクスクスと笑った。
「リッシュへのこの感情って……『恋』、というものなの?」
「ふふっ、散々言っといて何だけど、それはカトレア自身にお任せさ」
「えっ!?」
「いずれ、はっきりと分かる時が来るさ。それまで、アタシやリッシュとは、あくまで『友達』として付き合おう。それでいいじゃないか」
「そ、そうなの?」
「大丈夫、もしリッシュがアンタに何かしようとしたら、アイツの脳天に風穴を空けてやるから」
 刹那、カトレアは興奮し、
「や、やめて、それだけはやめて!」
 と、人目もはばからず叫んだ。他の客が、二人に注目する。
「アハハ……。ちょっとばつが悪くなったねぇ、そろそろ出るかい?」
「うん、その、ご、ごめんなさい」
「気にしない気にしない!」
 アイリスは豪快に笑い飛ばした。カトレアは、改めてアイリスの人生経験の深さを知ったのであった。


 カトレアは帰宅するや否や、ベッドになだれ込んだ。
「初恋……初恋……」
 ただその言葉を脳内で反芻し、枕に頭を押し付けて悶えた。
「あーもー、恋って何なの!? リッシュってそういう対象なの!?」
 ひたすらバタバタ悶えたが、次第にそれも落ち着いていった。
「うーん……」
 そして、飛び起き。
「ま、いっか! リッシュとはお友達お友達、ウン!」
 女性関係が派手と周知の上であるリッシュと『友達』と割り切れているのは、他でもない、フェイシズとアイリスのお陰だということまで思慮の回らない、カトレアであった。少女はまた一つ、大人の階段を上ったのだ。
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category: 小説

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