激・桃隆の徒然なる日記&雑記

日常の話やら趣味の創作の話やらを徒然なるままに語っていきます。

 

涙を拭いて <2> 

連載とか言っておきながらちょっと間が空いてしまいました;
そんな訳で、続きです。今回もブログ記事という形で失礼!
今回は、人によっては百合解釈するかもなーという文面ですが、
作者の私はそのつもりは全くありませんので、ご了承を。
なお、実妹からは「アイリスイケメン」と言われました。

では、興味ございます方は続きより!


拍手どうもありがとうございました!


 カトレアはいつの間にか眠りこんでいた。気疲れからベッドになだれこんだのだが、それが睡魔に発展した模様だった。彼女が目覚めたときには朝食を食べてから数時間経過しており、フェイシズはとっくに仕事へ出かけてしまっていた。
「どうしようかな……」
 いくら人目からかくまうためとはいえ、ずっと家に閉じこもりきりである、カトレアとて退屈しないわけがない。本を読もうにも、カトレアは字が読めない。では、絵だけなら……とはいいつつ、フェイシズが所有している主な本は、あの端正な顔立ちからは大凡連想できない、変態じみたいかがわしいものばかりだ。それが女性にとって如何に不快なものであるか、というのは、こういったサブカルチャーに触れてきたことのないカトレアですら分かるものである。
「……?」
 その件の本とやらは、いつの間にか片付けられていて、カトレアの目に触れることはなかった。女の子を連れ込んだ家でそういう本を散らかしてある、と来れば完全に変質者そのものであるから、その誤解を払拭するためにフェイシズ自身がどこかに隠したのだろうか。
「ん、そこにエロ本がないのに気付いたかい? それならアタシが全部バラバラにして捨てて、今頃ゴミ収集車で運ばれている頃さ」
 いつの間にか、フェイシズの親しい知人であり《始末屋》仲間でもある、アイリス・ケルトナーが家の中に入り込んでいた。これについてはさすがのカトレアも驚いた。
「あんた……どうやって? あのおっさんだって今はいないのに」
「例の如く、アンタの面倒を頼むって、フェイから合鍵を渡されたのさ。全く、アタシだって暇じゃないのに」
「…………」
 いくらカトレアが貧民街をうろついていた孤児とはいえ、フェイシズがやっていることは未成年者略取及び監禁である。フェイシズという男は一体何を考えているのか、彼と付き合いの長いアイリスすら理解に苦しんでいるようだ。
(たとえ『あの子』が生きていたら『この子』と同じぐらいの年頃だとしても、ねぇ……)
「?」
「な、何でもないよ。ま、座りな」
 まるで自分の家のようにくつろぐアイリスのすぐ目の前に、カトレアは座った。
「あんた、名前、アイリス、っていったっけ?」
「そうだよ。で、何を言いたいんだい?」
「そ、その……あの本……本当に捨てちゃったの?」
 顔を顰めたカトレアを前に、アイリスは自身の大いなる失態に気付いた。
「……あー! マズい、このままじゃカトレアに身の危険が! 全く、深いことを考えたアタシがバカだった、アイツはただの変態だよ!」
「…………」
 アイリスの言わんとしていることが何となく分かったカトレアは、一瞬背筋が凍りついた。一刻も早くここから出ていかなければ……という焦燥感すら生まれたほどに。
「……なんてね、冗談さ。フェイの人柄はよく知っている、アンタをいたずら目的で連れてくるなんて真似をするような男じゃないよ」
「本当……?」
「多分」
 曖昧な言葉で返したアイリスを見て、カトレアは冷や汗を流した。
「ま、エロ本の件についてはリッシュに何とかしてもらうよ。アイツは三次元限定だからフェイとは若干趣味が合わないけどね」
「リッシュ……あぁ、あのやたらとお調子者の男のこと?」
「ああ。アタシの仕事上のパートナーさ。本来だったら今日は仕事なんだが、アタシはフェイに頼まれてここで留守番だから、今回のミッションはアイツ一人。ま、今回は大した仕事じゃないから、アイツ一人でも余裕だよ」
 アイリスのパートナーであるリッシュ・ステュアートもまた、フェイシズと付き合いのある《始末屋》の一人だ。性格が軽い男ではあるが、戦闘能力なら十分に高い。
「あのリッシュという人を、信頼しているんだね」
「まぁ、仕事上では。あれで女に節操ないところが何とかなればねぇ」
「アイリスは、リッシュに手を出されていないの?」
「最初はそれ目的で言い寄られたが、一度瀕死の重傷を負わせてやってからは一切なくなったよ。さすがに命は惜しいみたいだね、ハハハ!」
「へ、へー……」
 アイリスとリッシュの絶妙な関係性に、カトレアは非常に感心した。
(…………)
 女傑アイリスと語らっているうちに、少女カトレアは、自身の変化に気付いた。氷の心が融けていっているような感覚がしてきたのだ。自然と言葉遣いが柔和になっていっている――このことを自覚し始めた。フェイシズは、アイリスという女性ならカトレアの心をほぐしてくれるだろうと信じた上で、カトレアの世話を頼んだのだろうか。まるで母のような、姉のような。
「ん、どうしたんだい?」
「え、えーと、その……」
「……今のカトレアの顔、凄く素敵だよ。完全に年頃の女の子じゃないか」
「!」
 男の口説き文句みたいな言葉遣いに、カトレアは一瞬動揺した。
「いやいや、変なことを言ったつもりはないんだがねぇ。それより、喋りどおしで疲れていやしないかい?」
「うん、ちょっと……」
「じゃ、待ってな」
 アイリスは不躾にも、家の冷蔵庫のドアを開けた。
「おーおー、フェイもちゃんと分かっているじゃないかい」
「?」
 そう言ったアイリスは、ペットボトルのジュースとグラスを持ってきて、そのグラスになみなみとジュースを汲んだ。
「これでも飲みな。甘くて美味しいよ」
「うん」
 カトレアは口を付けたと思いきや、ごくごくと一気に嚥下した。
「美味しい!」
 それは、カトレアが飲食物について初めて口にした感想であった。顔は綻び、幸福そうな様子が見て取れた。
「ほら、しっかり味わって。美味しいのは分かったから。じゃ、次は自分で汲むんだ」
 汲んで、飲んで、汲んで、飲んで……。
 いつの間にか、一リットルのペットボトルは空になっていた。
「あー、美味しかった! ありがとう、アイリス!」
「フフッ……!」
 すっかり打ち解けたカトレアを見て、アイリスは慕情のような想いを脳裏に浮かべたのだった。
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category: カトレアシリーズ

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